苦境に立つアバクロ

海外展開を強化する中でオープンした日本における旗艦店舗「銀座店」。
その銀座店ができたちょうどその頃、「ウォールストリートジャーナル」誌では、『「アバクロンビー&フィッチ」社の売り上げ不振は相当に深刻である』との記事が出ました。

カジュアルブランドのライバルである「H&M」や「FOREVER21」などのファストファッションに若者が流れていく中、問題は最早価格だけではない、との指摘があります。

多くの競合店がトレンドアイテムをキャッチアップし、リーズナブルな価格帯で商品サイクルも一定期間を維持し、流行と新鮮さを保つ中、「とにかくアバクロの商品はデザイン、ラインナップともに飽きられている」と。

自らのブランドに、自らブランドイメージやそのコンセプトを課した場合、店舗(箱)をそれに合うように保つことは比較的容易ですが、商品も同様に「飽きられず、新鮮でいること」がいかに難しいかを示していると言えるのではないでしょうか?

「アバクロ」の場合、姉妹ブランドも含めて、お金持ちで容姿端麗、着てくれるだけで「歩く広告塔」になりえるような若者だけをターゲットにしているので、今のティーン事情や嗜好に合わなくなってきている可能性があります。

リーマンショック後である2009年も、一時的には売上が低下しましたが、それでも何とか採算ラインは維持していました。
しかし、ここにきて2013年度の第三四半期決算においても「赤字」となっており、いよいよその成長路線にも陰りが見え始めたかも知れません。

最近では、「アンチ」化の動きも顕著であり、「ホームレスにアバクロを渡して、世界No.1のホームレスブランドにしよう!」と呼び掛ける動画が、グレッグ・カーバー氏(映像作家)によって公開されています。

これは、ホームレスの人々に「アバクロ」の服を押し付けるのではなく、元々アパレル企業などは売れ残り商品のタグを切り落として、ホームレスに寄付していますが、「アバクロ」はこれをやってこなかったため、上手く逆手に取った抗議活動として、YouTubeにアップロードされた動画は、公開約2週間で700万回PVを記録しています。

おもしろ半分に見ている人も当然ながらいるとは思いますが、これを若者が見る場合事情は違ってきます。
この動画をイメージしてしまうというネガティブな感情が生まれるため、「アバクロ」を避ける可能性があるのです。

肝心のターゲット層が離れてしまいかねないこの苦境。
「アバクロ」はどう切り抜けるでしょうか?

最終更新日 2025年6月18日